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後継者難倒産、過去最多の264件 — その85.6%は「後継者がいない」ではなく「社長が先に倒れた」だった

後継者難倒産、過去最多の264件 — その85.6%は「後継者がいない」ではなく「社長が先に倒れた」だった

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カテゴリ: 事業承継
約7分で読めます
最終更新: 2026年7月17日


はじめに

「事業承継が大事なのは分かっている。でも、まだ元気だから、もう少し先でいい」——中小企業のオーナー社長から、よくそう伺います。

その気持ちは、とてもよく分かります。日々の経営は忙しく、体もまだ動く。承継は「いつかやること」で、今すぐの用事ではない。そう考えるのは自然です。

ですが2026年7月9日、その「もう少し先でいい」を正面から揺さぶるデータが公表されました。2026年上半期の「後継者難」による倒産が、過去最多の264件に達したのです(東京商工リサーチ調べ)。

しかも、本当に重いのは件数ではありませんでした。その中身を見ると、倒産の85.6%は「後継者が見つからなかったから」ではなく、「代表者が先に亡くなった、あるいは体調を崩したから」だったのです。

この記事では、この数字を出典にあたって確かめたうえで、事業承継の「締切」は本当はいつなのか、元気なうちに何をしておけばいいのかを、順を追って考えます。

この記事の数値は、執筆時点(2026年7月17日)に東京商工リサーチの公表資料で確認したものです。特定の企業の倒産や事例には触れず、公表された集計データと構造だけを扱います。


まず、この数字が「どこの・いつ・誰を数えたか」

数字を受け取る前に、それがどういう調査かを整理します。ここを飛ばすと、数字は独り歩きします。

項目 内容
出どころ 東京商工リサーチ(信用調査会社)の公表資料
発表日 2026年7月9日
集計期間 2026年1〜6月(上半期)
数えたもの 負債1,000万円以上の倒産のうち、「後継者難」が原因のもの
件数 264件(前年同期比 +14.7%、2013年以降の上半期で最多)

「後継者難倒産」とは、後継者が決まらない、あるいは代表者に不測の事態が起きて事業を続けられなくなった、といった事情で行き詰まった倒産を指します。景気が悪くて売れずに潰れる、という話とは別の枠です。

上半期で264件。これは、これまでで最も多い水準です。


本当の発見は、件数ではなく「要因の内訳」

件数の多さ以上に見ていただきたいのが、その264件が、なぜ倒産に至ったかの内訳です。

倒産の要因 件数 割合
代表者の死亡 119件
代表者の体調不良 107件
上記の合計(=代表者の健康) 226件 85.6%
その他 38件 14.4%

後継者難倒産264件の要因内訳。85.6%(226件)は代表者の死亡・体調不良が要因(出典:東京商工リサーチ 2026年7月9日発表)

264件のうち226件、実に85.6%が、「代表者の死亡」または「体調不良」でした。つまり、後継者が見つからなかったというより、準備をする前に、社長自身の体が先に止まってしまったのです。

もう一つ、重い数字があります。この264件のうち、96.2%(254件)が「破産」でした。つまり、会社を誰かに譲る(M&Aや事業譲渡)ところにすら至れず、そのまま消えているということです。

「後継者難」という言葉から、私たちはつい「継いでくれる人がいない問題」を想像します。ですがデータが示しているのは、それ以前の段階——社長が元気に動けるうちに、譲る準備そのものが間に合っていない、という現実でした。


「後継者不在率は改善している」のに、なぜ倒産は増えるのか

ここで、一見矛盾する別のデータを並べます。

後継者が決まっていない企業の割合(後継者不在率)は、実は近年改善傾向にあります。2025年時点で全国平均は50.1%まで下がり、7年連続で改善しました(帝国データバンク調べ、2025年11月発表)。相談窓口や支援制度が広がった効果とみられています。

不在率は下がっているのに、後継者難の倒産は過去最多。これは矛盾でしょうか。

中小企業の事業承継の二極化。支援に手が届く層は相談・準備して承継できる(不在率50.1%へ改善)一方、支援に届かない小・零細は準備が間に合わず倒産(出典:帝国データバンク/東京商工リサーチ)

矛盾ではなく、二極化と読むのが自然です。

  • 支援に手が届いた層は、相談し、準備し、承継にたどり着けている(だから不在率は改善する)
  • 支援に手が届かない小規模・零細は、準備が間に合わないまま、社長の健康問題で倒産に流れる

実際、後継者難倒産の65.5%(173件)は資本金1,000万円未満の小・零細企業でした。改善の波に乗れた会社と、乗れないまま締切に追いつかれた会社。同じ「事業承継」でも、起きていることは正反対なのです。

参考までに、市場全体の倒産も増えています。2026年上半期の企業倒産は5,335件と、12年ぶりに5,000件を超えました(帝国データバンク調べ)。中小企業の退出そのものが、静かに常態化しています。


承継の「締切」は、後継者が決まる日ではない

ここまでのデータから、私たちが受け取るべき教訓は、はっきりしています。

事業承継の締切は、「後継者が決まるか」ではなく「代表者が元気でいられるうちか」です。

承継の締切は社長が元気なうち。「後継者が決まってから準備」では間に合わないことがある。社長が元気な今のうちに株・資産・後継を1枚にまとめておく

「後継者が決まってから、本格的に準備しよう」という順番は、一見まっとうに見えます。ですが85.6%というデータは、その順番では間に合わないことがあると告げています。後継者が決まる前に、社長の体のほうに先に締切が来てしまう。そのとき準備が白紙だと、会社は譲る先すら選べず、破産に向かいます。

だからこそ、順番を逆にする必要があります。後継者が決まるのを待つのではなく、社長が元気な今このうちに、「もし明日、自分が倒れても、会社が譲れる状態」を先に作っておく——これが、データが指し示す備え方です。


元気なうちに、何を「1枚」にしておくか

とはいえ、「承継の準備」と聞くと、範囲が広くて手がつきにくいものです。当社がお勧めしているのは、いきなり完璧を目指さず、まずバラバラな情報を1枚に集めることです。

具体的には、次のようなことを、社長の頭の中から紙(またはデータ)に出しておきます。

項目 何を書き出すか
株式 誰が何%持っているか。分散していないか。買い戻しや集約の要否
資産・負債 会社と個人(保証・借入・不動産)の線引き。個人保証の状況
後継の型 親族・従業員・第三者(M&A)のどれを軸に考えるか。候補は誰か
引き継ぎ情報 取引先・金融機関・許認可・キーマンなど、社長しか知らない情報

これは「完成させる」ものではなく、「今わかっている範囲を、まず一箇所に集める」ものです。バラバラなまま社長の頭の中にあるのが、いちばん危ない状態です。もし明日何かがあっても、この1枚があれば、残された家族や幹部、専門家が動き出せます。

なお、株式の移転や税務、法的な手続きそのものには、税理士・弁護士など専門家の関与が必要です。当社はその代わりをするのではなく、「散らばった現状を1枚に整理し、次に誰へ相談すべきかを一緒に見極める」入口の部分を、専門家と連携しながらご一緒しています。


まとめ

  • 2026年上半期、後継者難による倒産は過去最多の264件(東京商工リサーチ、2026年7月9日発表)
  • その85.6%(226件)は「代表者の死亡・体調不良」が要因。「後継者がいない」より前の段階で、準備が間に合っていない
  • 96.2%が破産=譲渡やM&Aにすら至れず消滅している
  • 後継者不在率は改善(50.1%)しているのに倒産は最多。支援に届いた層と届かない小・零細の二極化が起きている
  • 承継の締切は「後継者が決まるか」ではなく、「社長が元気でいられるうちか」
  • まず、株・資産・後継の型・引き継ぎ情報を1枚に集める。完成でなく、散らばりを一箇所にするところから

事業承継は、後継者探しから始まると思われがちです。ですがデータは、その手前で——社長が元気なうちに準備を形にできるかどうかで、会社の行く末が分かれると示しています。

当社は、経営者ご自身がお元気なうちに現状を整理し、次の一手を専門家とともに決めていくところからご一緒しています。「まだ先でいい」と感じている今こそが、いちばん余力のある準備のタイミングです。気になることがあれば、お問い合わせください。

お問い合わせはこちら →


参考・出典

この記事の数値は、執筆時点(2026年7月17日)に各出典の公表資料で確認したものです。調査の正確な定義・対象・集計時期は、各出典の原本をご確認ください。本記事は特定の企業・事例には触れず、公表された集計データのみを扱っています。

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